第九十六話　色即是空、空即是色「こんにちは、賢颯けんそうくん」「おはよう、賢颯くん」「ありがとう、賢颯くん」「ごめんね、賢颯くん」「おやすみ、賢颯くん」コンニチ...

第九十五話　胡蝶の夢「自分で見りゃいいのに」賢颯けんそうはそう言いながら、スマホの画面をタップして「ほら」と僕の目の前に差し出した。「……なかったら怖いじゃん」...

第九十四話　図南の翼「……は？ マジで？」如月きさらぎさんと別れたあと、僕と賢颯けんそうはなんとなく109の中をうろうろと冷やかしていた。別にヒカリエでもパルコ...

第九十三話　蜀犬、日に吠ゆ玄関の扉が開く音が聞こえて慌ててソファから立ち上がると、「鍵くらい掛けておけよ」と湊みなとが靴を脱ぎながら笑った。いろいろな衝動に駆ら...

第九十二話　解語の花「本っ当に三十分だけだからな」半ば強制的に連れて来られた "新規オープンの小洒落こじゃれたカフェ" のテーブルの上に、タイマーをセットしたス...

第九十一話　砂上の楼閣はじめての時はさすがに右も左もわからなかったけど、ディレクターとフォトグラファーがちゃんと指示を出してくれることを学習したオレは撮影に戸惑...

第九十話　仰げば尊い推し「卒業生 答辞。卒業生 一同起立。代表 一組 久御山 賢颯くみやま けんそう」「はい」── 厳しい寒さの中にも時折、開花を待つ桜の息吹が...

第八十九話　濡れぬ先こそ露をも厭え「……いま…なんつった？」「受験…やめる…ん……っ…あ…」「待て、ちゃんと話を」「話より…先に…すること……ある…ん…」……そ...

第八十八話　席暖まるに暇あらず新幹線の運転士をしばき上げることはなかったが、京都駅から東京駅、そこから家に向かうまでの間、湊みなとにどう連絡すればいいか悩み続け...