短い記号

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夏休み

ぱちりと目が合った。逸らすには不自然だし、かといってそのままでは僕の止まった呼吸が持たなかった。「…なに?」彼女は長い睫毛を少し伏せながらぶっきらぼうに話しかけ...
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ソレ

" ソレ " は突然 自分に降りかかる不幸なんの予告もなく 前触れもなくあっという間という言葉が 正にその通りなのだとその時にならなければ 知ることもなかった呼...
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雪が

さっきから しんしんと雪がこの世界から音を取り上げたようにただ 静かに落ちてくる目の前で そうっと積もっては消え消えてはまた そうっと積もる朝になれば 何もかも...
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おやすみなさい

あいも変わらず手足は冷たいテレビは肺炎の話を繰り返し繰り返しネットは発症国の悲惨さを声高に訴えるかの国の発表は信じられぬと世界が動くまるで地球が病に罹ったようだ...
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自由意志

身体はそうでもないのに常に手足が冷たい末端の冷えにはお腹を温めるとよい人間の身体で一番大事なのは内臓だから内臓が温まれば、余った血液が末端に流れるしかし腹巻もカ...
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要求スル

家に帰ると、歩けないくらい足下に絡みつき着替えて座ると、膝の上を陣取ってスマホを見てると、前足で訴えてくる「ぼくを撫でなさい」と。画面を見ながら撫でていると「真...
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冬はきらい

冬はきらい 寒いから天気がぐずつくから 空気が冷たいからわけもなく寂しくなるから意味もなく人恋しくなるから動きたくない 何もしたくない毛布に埋まって丸くなってい...
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デート

降り出した小雨避けつつ 急ぐ道映るガラスで前髪直す弾む息悟られまいと 整えて振り向きざまに目が合うあなた
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終わらない夜

自分の人生の主役は 自分だと思ってたやりたいこと やりたくないこと好きなもの 嫌いなもの自分のために選んで 自分のために為すのだとでも今は まるで人生の脇役のよ...
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舐め合う傷

いつだって愛されることばかり望んで疑って 泣き喚いて 罵ってこんなに傷付いたの、と 見えない傷口からどれだけの血が流れているのかを 執拗にあなたを責め立てること...