あのときの僕の話をしよう

あのときの僕の話をしよう

あのとき、僕は確かに彼女を愛していた。と思う。

気持ちに名前を付けるなら、それは「愛」と呼ばれるものだと思っていたし、それ以外のなにものであるか、なんて考えたこともなかったからだ。そんな自分を、いまなら「無知」と名付けるだろう。

 

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あのときの僕の話をしよう 目次

あのとき、僕は確かに彼女を愛していた。と思う。気持ちに名前を付けるなら、それは「愛」と呼ばれるものだと思っていたし、それ以外のなにものであるか、なんて考えたこと...
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あのときの僕の話をしよう 17

その81僕はどうしたいのかな…まだ彼女のことを愛しいと思ってるんだろうか。他の男の腕の中で眠る彼女を…むしろ、他の男の上で喘ぐ彼女を。胸の奥が締め上げられるよう...
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あのときの僕の話をしよう 16

その76「忘れもの」「ありがと、スマホないと不便なものね」「そうだろうね」「…入らないの?」「ん、遅いかなと思って」「せっかく来たのに、あがればいいじゃない」そ...
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あのときの僕の話をしよう 15

その71いま僕はどうすることが正しいんだろう。背中で泣く彼女を優しく抱き締めればいいのか、激しく求めればいいのか、冷たく突き放せばいいのか。結局、抗えずに抱き締...
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あのときの僕の話をしよう 14

その66「理想的か? フラれるかもって泣いて真夜中に後輩の部屋でこんなことしてる僕が、彼女を大切にしてそうか? 憧れる要素なんてどこにあるんだよ」高まる感覚とは...
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あのときの僕の話をしよう 13

その61「…いいけど」なんで手なんだろう。湊に左手を差し出すと、両手でそっと触れながら、「楠本さん、指長くて細くて手が大きくてきれいだなあってずっと思ってたんで...
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あのときの僕の話をしよう 12

その56「高学歴、高収入、高身長、イケメン、イケボの楠本さんがフラれるなら人類はみんなフラれますよ!」「学歴とか、恋愛に必要なもん?」「要らないですね!」「です...
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あのときの僕の話をしよう 11

その51どうやって帰って来たのかわからないくらい、僕は動揺してたみたいで、出勤する時車を見たら、きれいにバックで停めてあって笑いが込み上げた。余裕じゃないか。憶...
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あのときの僕の話をしよう 10

その46「楠本さん、全然気付いてないんですか?」「何に?」世界一不幸な彼女が羨ましいって話はどこに行ったんだろう。「部内は当然、社内でもモテモテなのに」「そうな...
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あのときの僕の話をしよう 9

その41緩い暗闇の中で、心もからだも黙り込んだ僕に彼女が告げる。「…みっちゃん、LINE、会社のひとからじゃない?」「え?」その途端視界が明るくなって、目の前に...