初戀 四方山話

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物 語
四方山話 袖振り合うも多少の縁とか

 

藤城 湊 ✕ 久御山 賢颯 「オトナのおもちゃ」

「そういえば久御山って、おもちゃとか使わないね」
「は?」
「いじめるの好きだから、そういうの率先して使いそうなのに」
「なによ、湊おもちゃ使いたいの?」
「久御山に使っていいなら」
「おもちゃねえ……オレ的には邪道だと思うんだよなあ」
「へえ…なんで?」
「おもちゃに気持ちくされたらオレの立場なくね?」
「ああ、なるほど…」
「自分のカラダを使うことに意義があると思うんだよね」
「何にどんな意義を見出そうとしてるんだよ」
「仮におまえ、おもちゃがすげえ良かったらどうすんのよ」
「…ひとりでいるときの楽しみが増える?」
「え、だったらふたりで使う必要まったくなくね?」
「そうだね、根本的に使用用途が違うかな」
「おもちゃに気持ちくされてエロい顔でイく湊見たくないもん」
「そっか、じゃあ自分用にしようかな」
「え?」
「ローション買ってるショップからセールの案内来ててさ」
「うん」
「ショップのアイテム、全品50%引きになるんだって」
「うん」
「滅多にない機会だし、ポイントも貯まってるからさ」
「うん」
「どれにしようかなあ…」
「待って、湊ちょっと待って」
「ん?」
「かっ…買うの?」
「うん、久御山使わないんでしょ?」
「いや、そうだけど、いやそうじゃなくて」
「大丈夫だよ、持ち込んだりしないから」
「なんで? っていうかおまえそういうの恥ずかしいとか言って絶対手出さないと思ってたけど」
「ああ…誰かに見られるのは嫌だけど、ひとりで使う分には特に」
「……想像したら勃って来た」
「何を想像してんだよ」
「使ってるとこ見たい」
「いや、さっき見たくないって言わなかったか?」
「なんか…詳細に想像するとちょっと…いいかな、って」
「何をどんだけ細かく想像してんだよ! やめろ!」
「やっぱり使うからオレが選んでもいい?」
「え、久御山に使ってもいいならいいけど、僕に使うって話ならお断りだよ」
「えーいいじゃん見たい見たい、おもちゃに気持ちくされて涙目になってる湊見たい」
「願望を織り込むな、絶対嫌だ」
「えー…じゃあ、オレに気持ちくされて涙目になってる湊見せて」
「え、ちょっ、待っ…おい、なんで脱いでんだよ、待てって久御山! おい!」

 

***

 

桜庭 榛臣 ✕ 樋口 宗弥 「受けるか攻めるか」

「はい、プレゼント」
「今日って何かの記念日とかでしたっけ」
「いや、全然」
「開けてもいいですか?」
「開ける前に約束して」
「何をですか?」
「ちゃんと使うって」
「え、あ、はい…わかりました」
「度胸あるねえ…」
「…………宗さん、これは、一体、何なんですか?」
「ご覧の通り、本革の手枷と足枷だけど」
「宗さんにそういう趣味があるとは知りませんでしたけど」
「ねえわ! 大学時代のツレが革職人でさ、今度個展開くんだと」
「はあ…ボンデージとかSM系なんでしょうか」
「おう、鞭なんかも作ってるらしい」
「へえ……本格的ですね」
「…………で、おまえはなんで俺に手枷を着けようとしてんの」
「ちゃんと使うって約束したんで」
「なんで俺がオネダリしたみたいになってんだよ」
「で、同梱されてたコレも使っていいんでしょうか」
「同梱? なんかオマケでも入ってた?」
「催淫剤ですかね…リキッドとジェルみたいですけど」
「どうせ効かないだろ、そんなの」
「じゃあ安心して使えますね」
「なんで他人事みたいな顔してんの?」
「思いっきり自分事としてドキドキしてますけど」
「だから、なんで俺に使おうとしてんだよ」
「…おれに使った場合の宗さんの幸福度と、宗さんに使った場合のおれの幸福度が」
「幸福度が?」
「絶対的に違い過ぎるんで」
「それが何の理由になってんのかわかるように説明してくれ」
「…じゃあ腕相撲で決めましょうか」
「あのな、現役で弓道やってるやつに敵うわけないだろ?」
「んー…じゃあ宗さんが対戦方法決めてもいいですよ」
「…収入」
「おれ大学生なんですけど」
「付き合った女の数」
「宗さん、それちゃんと憶えてます?」
「初体験の年齢」
「おれ十五です」
「俺も十五だな…じゃあやっぱ身長かな」
「最初から負け戦じゃないですか」
「ナニの大きさとか」
「…負け戦ですってば」
「よし、この場で勝負しようぜ」
「いいですよ、垂直飛びでもしますか」
「先にイったほうが負け」
「……負け戦です」
「はい、じゃあ素直にお縄頂戴しろ」
「縄じゃなくて革ですけどね」
「…なあ、この催淫剤、めちゃくちゃ効いたらどうする?」
「怖いこと言わないでください」
「まあ、いいか……どっちみち足腰立たなくしてやんよ」
「やっぱり攻守代わりませんか」
「守ってどうすんだよ」

 

***

 

橘 真光 ✕ 綾小路 澄晴 「健全なふたり」

「みっちゃんと出掛けるの久しぶりだねえ」
「毎日一緒に学校行ってるけどね」
「ほら、健全なデートって久々じゃない?」
「そうだね、どこか行きたいところあるの?」
「特にない……かな?」
「映画でも観に行く?」
「うん、その前にちょっと寄り道してもいい?」
「行きたいところがあるんだね」

………

「……うーん」
「…………何を悩んでるの?」
「ねえ、みっちゃんどっちが好き?」
きよがいま持ってるの、服でも靴でもアクセでもなくアナルバイブだけど?」
「あ、ディルドのほうがよかった?」
「動くかどうか、が問題なわけじゃないよ?」
「双頭ディルドとか、イイのかなあ」
「それは経験者に訊くしかないね」
「みっちゃん、経験者になればいいんじゃないの?」
「バンジージャンプのほうがまだ勇気出るかな」
「冒険するのやめて、無難にローターにしておこうかな」
「健全な十代にとって、まったく無難じゃないシロモノだね」
「みっちゃん、ピンクと黒どっちが好き?」
「中に挿れたら色なんてわからないんじゃない?」
「手元にコントローラーあるじゃん」
「あ、そうか…じゃあ、黒かな」
「オッケーイ」
「まさかとは思うけど、それ、おれ用じゃないよね?」
「まさか…プレゼントするならちゃんとした物贈るよ」
「アダルトショップでちゃんとしてる物って何?」
「あ、バニラの香りのローションだって」
「食べ物を冒涜するようで気が引けるかな」
「みっちゃんコスプレとかどう?」
「どう? って、好きかどうか? それともしたいかどうか?」
「みっちゃん美人だからナースとかどう?」
「アパレルの店員みたいに言われても」
「あ、でもナース服でシリンダーとかカテーテル持ってたらヤバいよね」
「畏れ多くて病院行けなくなりそうだよね」
「興奮し過ぎて嬉ションしそう」
「そっちなの?」
「あ、みっちゃん…映画始まってる」
「健全なデートって言わなかった?」
「帰って健やかにセックスしよ?」
「いいけど、ナース服は買わないよ?」
「アナルビーズにしとく?」
「代替の選択肢、間違ってない?」
「愛情表現なんてひとそれぞれだよ」
「愛情表現だったの?」

 

***

 

藤城 湊 vs 桜庭 榛臣

「……とりあえず勝負しろって話ですけど」
「何か得意なことって、ないのか」
「桜庭さん、ゲームは」
「PSもWiiもXboxもSwitchも持ってるけど」
「え、意外……」
「普通にジャンケンとか、あみだくじにするか」
「……桜庭さん」
「どうした」
「僕、若い頃の宗さんの写真持ってますよ」
「…っ…!」
「しかも学ラン」
「……卑怯だぞ、藤城」
「……? 僕は写真を持ってる、って言っただけですよ?」
「おまえ、実は腹ん中真っ黒なんじゃないか?」
「世渡り上手って言ってください」

 

***

 

久御山 賢颯 vs 樋口 宗弥

「……とりあえず勝負しろって話ですけど」
「対戦方法は賢颯くんが決めればいいよ」
「オレが宗弥さんに勝てること……」
「どっからでも掛かって来なさい」
「……若さ?」
「オレがマンボウだったら突然死してるぞ」
「強くてニューゲームですよ」