初戀 第六話

初戀 表紙
物 語
第六話 秋の鹿は笛に寄る

 

「……最初は…わかんなくて」
「何が」
「何されてるか……わかんなくて」
「…………」
「まだ小学生で、そういうこと知らなくて」
「藤城」
「誰にも……言えなくて…」
「藤城……無理に話さなくても」

 

 

初恋の相手が幼稚園や保育園の先生だったって話を、そう少なくもない頻度で見聞きした。小学三年生にもなると、誰が誰を好きだとかって話で教室が賑わうこともあった。僕はまったく興味がなくて、冷やかされて赤くなる同級生を不思議な気持ちで見てた。

学校の運動場で友達とサッカーをした帰り道、知らないひとに声を掛けられた。親からも学校からも「知らないひとに着いて行っちゃいけない」と言われてたけど、散歩の途中で犬がいなくなったと言うそのひとが、とても悲しそうな顔で「一緒に探して欲しい」と言ったので、僕は断ることができなかった。

しばらく一緒に探したけど犬は見つからなくて、僕まで悲しくなった。そのひとはお礼に、と僕にジュースを買ってくれたあと、手を洗いたいと言って公園のトイレに入った。

「汗かいちゃったね」

その男のひとはトイレで僕のズボンとパンツをおろし、股間に顔を埋めた。何をされるのかわからない恐怖と、トイレの個室の閉塞感に心臓が破裂しそうになった。帰りたい帰りたい帰りたい……その時、ぬるっとした感触と同時にいままで感じたことのない ── 快感に脚が震えた。

怖い、帰りたい……確かにそう思うのに、なんだかわからない気持ち良さに逆らえなかった。

「おちんちん勃ってるけど、気持ちいい?」
「……うん……」
「そっか、いい子だね」

何がいい子なんだろう。僕はシャツの裾を握り締めながら、その気持ち良さをどう受け入れればいいかわからず耐えた。どうしよう……下腹がじんじんする……脚に力が入らない……気持ち良さの波がはっきりと感じられるようになり、脚の付け根が疼いた。

僕は無我夢中でそのひとにしがみ着き、自分の身体がおかしくなって行くような感覚に泣いた。

「気持ち良かった?」
「……うん」
「恥ずかしい?」
「うん……」
「だったらパパとママに言っちゃダメだよ、恥ずかしいところ知られちゃうから」

 

家に帰ると母が大慌てで玄関に走って来た。

「こんな時間まで一体どこで何してたの! どれだけ心配したと思ってるの!?」

僕は何も言えなかった。

恥ずかしい自分を知られたくなかった。

 

***

 

「おいで、湊……休憩しよう」

いつものようにベッドに腰をおろし下半身を露出する。先生は僕のモノを咥えると舌を巻き付け、ゆっくりと口唇でそれをしごく。いつ母が部屋に来るだろう、と僕は不安でいっぱいになりながら、声が漏れないように両手で口を塞いだ。

僕は変なのかな……こんなことをされて気持ちいいと思う僕はおかしいのかな……いつもより先生の舌が激しく動く。気持ちいい、気持ちイイ、気持チイイ……おかしくなる……

「先生……僕、もう……」

 

── こんな可愛い顔してるのに、男に咥えられて気持ち良くなって口の中に精液ぶちまけちゃうんだ……いやらしい子だなあ……められるの好きなの? ふふ……よだれ垂らして欲しがるなんて、よっぽど好きなんだね……恥ずかしいことされるの、大好きだもんね、湊……

 

「湊、ちょっと違うことしようか」
「……なに」
「うつ伏せになってごらん」
「え…なんで」
「気持ちいいことしてあげるから」
「……怖い」
「大丈夫、痛いことしないから」

ベッドでうつ伏せになると、腰を持ち上げられた。何をされるのかわからなくて全身から汗が噴き出した。

「あっ……!」

え…なに……先生、なんでそんなとこ……あっ…やだ、そんな汚いとこめちゃやだ……あ…

「せんせ…やだ……汚い…」
「痛い?」
「痛くない…けど……恥ずかしいよ…」
「恥ずかしいことされるの、好きじゃん」
「…っ…ちが…」
「湊はアナルまで可愛いな……ピンク色で…」

…やだ……!

 

先生は週二回、勉強を教えてくれたあと僕をイかせて……後ろをめる。でも今日は最初から後ろをめられた。やっぱりやだ……そんなとこめないで、先生……とにかくただじっと耐えていると、先生は脚の間を探り、僕の萎えたモノを握って優しく刺激し始めた。

「すごいね、湊……どんどん大きくなる」

……だって…そんな風に触られたら……

「ふ…ガチガチじゃん……気持ちイイの?」

あ、あ、あ……

「その可愛い顔にこんなおっきくて硬いの付いてるってエロいよね……」

ああ、あ、あ…恥ずかしいから……言わないでよ…

「湊、ほんと感じやすいよね……ほら、もうこんなにぬるぬるしてる」

やめて…あ、あ、あああ……あ…そんな動かされたら…あ…

「腰動いてるよ、湊……」

…!! や……あ、ああ、あ……あ…イきそ…う…

「まだイかせない」

先生は動かす手を止めた。後ろをめられながら、透明な体液が垂れて来る先端を指でぬるぬる刺激され、おかしくなりそうだった。下半身を露出したまま四つん這いで腰を突き出す僕はもう、イくこと以外考えられなくなっていた。

初戀 六話

「あああああ先生せんせぇせんせ…あ…イかせて…イかせて先生」
「アナル舐められて先走りでぬるぬるんなって、おまえ本当にエロいんだな」
「ちが…ちがう……」
「違わないよ、おまえはエロいことが好きな欲しがりのビッチなんだよ、湊」
「ちが…う…」
「アナルひくつかせながら何言ってんだよ……」

先生が僕のモノを握り、手の中でぬるっと滑らせる。

「ぅあっ……ああ、あ…せんせ…」
「気持ちイイ?」
「う…ん……気持ちい…イきたい……」
「どうして欲しいの?」
「ああ、あ…擦って……イかせてせんせぇ…」
「足りないなあ…何をどうして欲しいって? 教えたとおりに言えよ湊」
「う…あ、あ……ぼ…くの…かたくな…ったおちんちん擦って……イかせて…くださ…い…」
「…いい子だね」

あああ、あ、あ、ああ……ああ…っ……ん…イ…く……せんせ…イくぅ……っ…

 

「可愛いなあ……アナルめられながらイっちゃうんだ……」

はぁはぁはぁはぁはぁ……

「本当に湊は……ビッチで可愛いね」

 

どんどん……おかしくなる……

 

──

 

塾に行くのが嫌だった。

小四の時の一件があってから、親とも友達とも上手に関われなくなった。学校で感じる息苦しさを、塾に行ってまで感じたくない。でも、勉強以外にやることがなかったから、せめて勉強はしていたかった。

「はじめまして、湊くん……で、いいのかな?」

塾には行きたくないけど勉強はしたい。そう言った僕に母は家庭教師を勧めてくれた。大学二年だという先生は、僕が見ても高校生くらいにしか見えなかった。優しそうな笑顔、落ち着いた柔らかい声。何より先生の教え方がわかりやすく、学校に行くよりずっと先生に教えてもらえたらいいのにな、と思った。

 

「クリスマスなのにおべんきょーかよ」

先生は笑いながら僕に包みを手渡した。箱を開けると、ショートケーキの上に小さなサンタクロースが乗っていて思わず笑いが込み上げた。十二月二十四日は休みにする生徒が多い中、何の予定もない僕は休みの申請をしなかった。先生はいつもどおり家に来てくれた。

「男ふたりで楽しく・・・ケーキ突つこうぜ」

もしかしたら先生はデートの予定があったのかもしれないな……勉強終わってからでも時間あるから大丈夫なのかな……クリスマス・イヴに勉強って、やっぱりみんな回避するものなのかな……

「先生、ごめんね」
「あ? なに、期末そんな悪かったの?」
「違うよ……今日、クリスマスなのに…僕、気利かなくて」
「……いまどきの小学生は、そんなことに気を遣っちゃうの?」
「うん……デートとか…大丈夫だった?」
「ううん、すっげ怒ってた」
「ご、ごめん……やっぱり怒るよね…」

失敗したな……そう思って委縮していると、先生はプッと噴き出して僕の肩を叩いた。

「嘘うそ、冗談。家教バイトの予定しかなかったから大丈夫だよ」
「でも……それでもクリスマスにバイトなんて」
「……じゃあさ、クリスマスにバイトしてるおれにご褒美ちょうだい?」
「ご褒美……?」

先生は自分の頬をひと差し指でトントンと突ついた。

「ほっぺにチュウ」
「…えっ……」
「可愛い小学生のチュウで癒して」

……本気なのかな。僕のそれがご褒美になるとも、癒しになるとも思えないけど……僕は立ち上がり、隣に座っている先生の頬に口唇を押し当てた。先生は僕を抱き締め、僕の口唇にキスをした。

 

「…ん……っ…」

頭から「クリスマスにバイトしてるおれにご褒美ちょうだい」という言葉が離れなかった。泣いたり怒ったりするほどの嫌悪感はないにしろ、生温かい舌で口の中を掻き回されるなんてことは初めてで、僕はどうすればいいのかわからなかった。

「……触っていい?」
「なに……を…?」

先生は僕の服の中に手を入れ、背中をゆっくりなでたあと、その手で胸の辺りを探りながら指先で突起・・をつまんだ。

「んっ…」
「……痛い?」
「…痛く…ない……けど…」

痛くはないけど……なんか、変な感じ……

 

そのあと、先生がトイレに行っている時、机の上に置きっぱなしの先生のスマホがブルっと震え、僕はその通知画面を見て心の中で何度も謝った。

 

── ドタキャンした埋め合わせ、高く付くんだからね!

 

彼女からのLINEは、先生の優しい嘘を教えてくれた。

 

 

 

「湊くんて、好きな子とかいないの?」

年が明け、冬休みが終わるその日に先生は僕に訊ねた。

「いない」
「いまどきの小六って、彼女いる子もいるでしょ」
「うん、クラスに何人かは……」
「そういうの、全然興味ないの? ここ、途中の計算間違ってる」
「あ、ほんとだ……興味ないっていうか……よくわからなくて」
「……わかるようにしてあげようか」
「え…そんなことできるの?」

先生は問題集に付箋を貼りながら「次、ここまでやってみて」と言うと参考書と問題集を閉じ、僕を椅子ごとクルっと動かして向かい合わせになった。僕の脚の間に手を伸ばした先生はそのまま優しく股間で指を動かし、ズボンの上から僕を刺激した。

「……っ…なに…す」
「しーっ……ちょっとここ・・に集中してみて」
「せ、先生……」
「湊くんさ……もう射精してるの?」
「……や…うん…えっと」
「恥ずかしがることないよ、男同士じゃん」
「それはそうだけど…」
「じゃあもうオナニーしてるんだ」
「…して…ない…」
「……なんで?」
「なんとなく…悪いことしてるみたいな…」

先生は僕を椅子から立たせると、何も言わずにズボンとパンツを下ろし、僕は慌てて両手で脚の間を隠した。いきなり何をするんだ、と訴えるように先生を見ると、先生は優し気な笑顔のまま、僕の手を掴んで左右に広げた。

「…勃ってるね」
「だ、だって……」
「おいで、教えてあげるから」

そう言って先生は膝の上に僕を座らせ、僕のモノを優しく握った。

「悪いことなんかじゃないよ……男なら普通のことだから」
「う、うん…そうなんだ……」
「湊くん……大きいね…」
「えっ……」
「可愛い顔してるから、ちょっと意外……いいね、エッチで」
「エッ…ち…って……」
「ちゃんと剥けてるし……誰かに教わったの? ネットで調べたとか?」
「や、あの、ちょっと……本で…見たから…」
「ふふっ……痛くない?」
「うん…大丈…夫…だけど」
「だけど?」
「…なんか…痺れるっていうか……疼くっていうか」
「我慢しなくていいよ」

そんなこと言われても……自分でもここまでしたことがないのに、他人の手で自分の感覚を制御されている違和感に、どうしても身体が緊張してしまう……

「あ、あの、先生……もう、わかったから…」
「緊張してイけない?」
「それ、よくわかんない……」

先生は膝の上の僕をベッドに座らせ、脚の間に身体を割り込ませた。左右に広げた両手はベッドに押し付けるように押さえられ、かといって大声でやめてくれと言うわけにもいかなかった。何事かと母に踏み込まれることだけは避けたい……でも、その心配は別の形でさらに僕を追い込んだ。

手で擦られている間はまだ我慢もできていたそれは、ぬるりと熱い何かが絡み付く感触で一気に耐え切れなくなった。

「ぁあ…っ…」
「……声、聞こえちゃうよ?」

先生が緩めた手の下から慌てて自分の手を引き抜き、両手で口を押さえた。先生を押し退けるという選択肢を選ぶ余裕がなかった。とにかく漏れる声をなんとか抑えたい……その時、公園のトイレで自分の身体がおかしくなって行くような感覚に震えたことを鮮明に思い出した。

 

……まさか、あれって…

 

「ん……う…う……ぅ」
「そこまで身構えなくても大丈夫だよ」
「んん…!!」
「いいよ、イっても」
「ん…ん……んう…」

何か・・が出る感覚と同時に下腹部が痙攣し、下半身の力が抜けて鳥肌が立った。先生は何事もなかった顔でそれ・・を飲み込むと、優しく僕の頭をなでながら「いい子だね」と言った。