メトロノーム

メトロノーム
短い記号

初めて逢ったのは冬だった
なんでもない顔で手繰り寄せたきみの手が
あまりにも冷たくて二度見してしまった
氷のような 小さな手で僕の手を握り返し
「あったかいね」ときみは笑った

きみの歩くスピードに歩幅を合わせて
雪で湿った道をゆっくりと進んでみる
こんな風にのんびり呼吸をするのもいいね
吐く息は規則正しく 僕たちは歩き続ける

あえて行き先は決めないで ただ一緒にいよう
寒さにくじけたら 潔く店に飛び込もう
歩く音だけが 澄みきった空気を揺らして
まるで僕たちのメトロノーム 歩調を合わせよう