赦さない

赦さない
短い記号

信頼できるひとというのは
「このひとなら絶対に裏切らない」と
思える相手ではなく
「このひとになら裏切られてもいい」と
思える相手のことだと聞いて
胸にすとん、と何かが落ちた

かつて愛していたひとを赦せないのは
わたしに嘘を吐いて、わたしを裏切った
その負の思いが強過ぎて、心に棘を残したからだ
裏切られてもいいと思えるほど、信じていなかった
きっと愛ではなく、執着だったのだろう
未だに呪縛にもがき、赦せないままでいる

もう二度と逢うことのないひとを
心の片隅で憎み続けることの無意味さも知りながら
わたしは今日もあのひとを思い出し
あの日の自分を正当化して慰めている

それが、自分を傷付けていることもわかってて
繰り返し続けているのは
信じてしまった自分を誰よりも赦せないからだろう